昨日の昼過ぎ、
80歳は超えているであろう
おばあちゃまが
突然、塾に来られた。
(以下、少々長文です)
4階までの階段を杖をつきながら上ってこられたらしく、
「はあ、はあ、はあ、はあ
」
と肩で激しく息をしながら、
そして片手には当塾のチラシを持って
思わずお孫さんか誰かのお勉強のご相談かなと思い、席へ促すと、
手さげかばんから、郵便物らしきものを取り出し、
少し大きめの声で、
『この手紙に書いてある内容がわからないので、教えてもらえませんかねえ』とのこと。
見るとぎっしり英語で書かれたダイレクトメールらしきもの
文面はA4で3枚。
差出人がアメリカー中央運用―なんとかオフィス・・
文頭には
「Social Security Administration なんちゃらかんちゃら・・」
まず私の頭の中に浮かんだのは、
「おばあちゃまは、なぜこれを塾であるここに持って来たの?
もしかして、おばあちゃまは何か勘違いをされてる?」だった。
「それとも、塾だったらわからない英語の文章を訳してもらえる、そう思って来られた?」
あと咄嗟に感じたのが、
『この手紙ってもしかして詐欺![]()
』だった。
おばあちゃまに、
『どうしてここに来られたのですか?』とお聞きすると・・
反応がない・・
すぐわかったのが、
『おばあちゃまは、耳が遠い』ということだった
私も、
『えーっと、うーんと・・』と
状況がなかなかつかめず、少しうろたえていると
『耳が遠くて聞こえないので、
この手紙に書いてある内容を、紙に書き出してもらえますか?』とおばあちゃま
お話ししようにも、こちらの声は届かない。
状況がつかめないまま、
とりあえず、英語で書かれた文章に目を通すことに
しかし・・
「社会保障」がどうたらという内容なのはわかるけど、
たとえ日本語で書かれていたとしてもわかりづらい内容、
テンパり気味の私は上手く訳すこともできず・・![]()
一度深呼吸して、気を落ち着け、
筆談で、
「この手紙は、もしかしたらあやしいものかも知れないので、警察に行かれてはどうですか
」
と書くと、
それを見て、
『アメリカから送られてきたものなので、あやしくはありません
』
と先程より大きな声
少しの沈黙があって・・
『私は遺族年金をもらってるんです
』
「遺族年金」に「社会保障」?
「うん?」
少しつながったような気もして・・
その時、私が思い付いた妙案
以前高校生の生徒さんに教えてもらった、Google翻訳のアプリをスマホにインストールしていたことを思いだし・・
『そうや、これや
』
スマホの画面に英文を写し
訳された翻訳文を
スクリーンショットにし、
それをパソコン
へ転送、
プリントアウトして、
おばあちゃまに見せる。
おばあちゃま、目は良いらしく、
その文面を声を出して読んでもらった
(それはまるで、小学低学年の生徒さんに国語の読解を教えているときのようだった・・
)
結果、
それは詐欺ではなく、
「社会保障の支払い先を新しい預金先に支払う」旨のもので、それを長々と小難しく書かれたものだった。
そしておばあちゃま、
納得されました。
一連の騒動?
が終わり、(その間約30分)
おばあちゃまが、
『おいくらになりますか
』ですって。
『いえいえ、お金なんて結構です![]()
』
という私の声はおそらく聞こえておらず、身ぶりで悟られたのか、
『お時間取らせたのに、申し訳ないですからお支払いします』
私は「いえいえ」の手振り
『そうですかあ、それではお言葉に甘えてえ・・』
最後に何度も何度も
『ありがとうございました』とお辞儀をされ、
来られた階段を杖をつきながらゆっくりゆっくり降りて行かれた
帰り際、
『また、よろしくお願いします』とも言っておられた
最後まで、なぜうちの塾に来られたのか、わからないことだらけだったが、
ふと、
『自分の親もあと5年もすれば、あのおばあちゃまのようになるんだろうな
』と感慨深くなり、
状況はよくわからなかったけど、
いずれにせよ
困っている人の役に立てたのかな、なんて思う出来事だった
また、
前職のサラリーマン時代の自分なら、
忙しいさ中、
こんな風に人のために何かをしてあげられる、
そんな「ゆとり」を持つことはできなかっただろうな
なんて現時点での幸せを少し感じた
これで話は終わりです・・
と言いたかったのですが、
実は今日の昼過ぎ、
教室で仕事をしていると、
遠くから、
「はあ、はあ、はあ、はあ
」という
一定のリズムが聞こえてくるではないか![]()
ガチャっと扉が開いたと思うと、
昨日のおばあちゃまが、
『昨日はどうもありがとうございました。お時間をとらせてすみませんでした。これ、お礼の気持ちです』
と言って
ぶどうをいただいた
私の『ありがとうございます』
は聞こえてないだろうが、
おばあちゃまはにっこり笑って、
また長い階段を杖で支えながら、
ゆっくり下りて行かれた
おしまい
最後までお読みいただきありがとうございました。
神戸市中央区三宮町(三宮・元町)個別指導個人学習塾 「順進塾」

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